バレット食道について医師が詳しく解説
食道の粘膜は、扁平上皮という細胞で構成されています。そして、逆流性食道炎などによって長く炎症が続いた食道粘膜が、円柱上皮という胃の粘膜に似た状態へと変性してしまったのが「バレット食道」です。
バレット食道そのものは、何か症状を引き起こすということはありません。しかし、食道胃接合部がんというがんの発生母地になると指摘されているため、注意が必要です。
なおバレット食道は、円柱上皮へと変性してしまった食道粘膜の長さに応じて、以下のように「SSBE」と「LSBE」に分けられます。
SSBE(Short segment Barretts esophagus)
バレット食道の長さが3センチ未満と短いものを指します。
がんが発生するリスクはそれほど高くありません。
日本人の場合、バレット食道のうち99%はこのSSBEだと言われています。
LSBE(Long segment Barretts esophagus)
バレット食道の長さが3センチ以上のものを指します。
SSBEよりも高頻度で、がんが発生します。
バレット食道の原因は?
バレット食道は、逆流性食道炎を放置するなどして食道粘膜の炎症が長く続くことで発症します。
食道粘膜が傷ついては再生することを繰り返しているうちに、胃の円柱上皮が拡大してきてしまうのです。なお、逆流性食道炎の原因には、加齢やストレスなどに伴う下部食道括約筋の機能低下、食習慣・生活習慣の乱れによる胃酸の増加、肥満や不良姿勢による腹圧の上昇、薬の副作用などが挙げられます。
バレット食道の症状チェック
- 胸やけ、胃もたれ
- 前かがみになったときの胸やけ、胃もたれの増悪
- げっぷが多い
- 呑酸
- 喉のヒリヒリした感じ
- 食べ物が喉につかえる感じ
バレット食道そのものが何らかの症状を引き超すということはありません。バレット食道の原因となっている、逆流性食道炎の症状が見られます。
バレット食道の検査と診断
バレット食道の原因となる逆流性食道炎の診断は、その典型的な症状が認められる場合には、問診のみでなされることもあります。
一方、バレット食道の診断では、食道の粘膜をカメラで直接観察する胃カメラ検査が必要になります。また、がんが疑われる場合などには、胃カメラ検査の際に細胞を採取し、病理検査を行います。
バレット食道の治療
バレット食道そのものを治療することはありません。以下のように、バレット食道の原因となっている逆流性食道炎に対する治療を行うことで、バレット食道の範囲が狭まったり、がんの発生リスクが低減したりといったことが期待できます。
薬物療法
胃酸の分泌を抑制する薬、食道や胃の蠕動運動を改善する薬、胃酸を中和する薬、粘膜を保護する薬などを使用します。
リスクの高いLSBEの場合には、継続的な薬物療法を行うことがあります。
生活習慣の改善
食べ過ぎ・飲み過ぎ、脂っこいもの・刺激物の摂り過ぎを避ける、禁煙、腹圧を上昇させる姿勢の回避、肥満の解消、ストレスを溜めないといった生活習慣の改善に取り組みましょう。