胃がんについて医師が詳しく解説
胃に生じた悪性腫瘍のことを「胃がん」と呼びます。正常な胃粘膜の細胞が、がん化することで発生します。
以前は、国内における「がんによる死亡原因」の第1位のがんでしたが、検診やピロリ検査・除菌治療の普及、塩分摂取量の減少などによって、現在は第3位となっています。一方で、胃がんの罹患数は、高齢化の影響などにより増加傾向になっています。
胃がんは早期発見・早期治療によって、初期であれば完治できるがんになっています。そしてそのためには、定期的な胃カメラ検査が非常に有効な手段となります。胃がんはがんの中でも症状が乏しいため、リスクの高くなる40歳以上の方は、年に一度の胃カメラ検査をおすすめします。
胃がんの原因はピロリ菌?
胃がんの原因はピロリ菌?” class=”alignright size-full wp-image-419″ />正常な胃粘膜の細胞がどのようにしてがん化するのか、はっきりしたメカニズムは分かっていません。一方で、胃がんのリスクを高める要因は、明らかになってきています。
代表的なものに、塩分の摂り過ぎ、野菜・果物の不足、喫煙、飲み過ぎ、ストレス、ピロリ菌感染などが挙げられます。
なお、ピロリ菌の除菌治療を行うことは、胃がんのリスク低減につながります。
初期症状がない胃がん
胃がんは、特に初期の自覚症状に乏しいがんです。症状がないから胃がんではないだろうと自己判断で考えず、40歳を過ぎたら年に1回は、胃カメラ検査を受けましょう。
進行した場合の症状は?
- 胃やみぞおちの痛み
- 吐き気、嘔吐
- 胸やけ
- 食欲不振
- 腹痛、腹部の不快感
- 吐血
- タール便
- 便潜血検査陽性
吐血、タール便、便潜血検査陽性は、胃がんから出血した場合に見られます。
胃がんの検査と診断
問診では、症状、食習慣・生活習慣、既往歴などをお伺いします。その上で、バリウム検査(上部消化管X線検査)または胃カメラ検査が行います。
バリウム検査とは、バリウム(造影剤)を飲んだ上で胃のレントゲンを撮影する検査です。バリウムの流れから、粘膜の凹凸を調べます。ただし、胃がんの確定診断には至りません。また、早期胃がんの発見にはあまり向いていません。
胃カメラ検査では、口または鼻から内視鏡を挿入し、食道、胃、十二指腸の粘膜の状態を調べます。カメラを介して直接粘膜を観察できることから、胃がんを含めた病変を早期に発見することが可能です。
バリウム検査と胃カメラ検査の比較~どっちが楽?おすすめは?~
全体的に病変を早期に発見できるという点では、胃カメラ検査が優れています。しかし、スキルス性胃がんにおいては、バリウム検査の方が優れていると言われています。
バリウム検査 | 胃カメラ検査 | |
---|---|---|
メリット | ・胃カメラ検査と比べて費用が抑えられる ・スキルス性胃がんの発見が得意 ・対応している医療機関が多い |
・放射線を使用しない ・食道、胃、十二指腸の粘膜を観察できる ・粘膜の凹凸だけでなく色調が観察できる ・粘膜の異常な凹凸の見落としが少ない ・早期の病変を発見できる ・組織を採取し病理検査ができる ・静脈内鎮静法を併用できる |
デメリット | ・放射線を使用する(被ばく) ・バリウムによる腸閉塞のリスクがある ・胃粘膜の色調は分からない ・検査後に下剤を飲む必要がある ・げっぷを我慢しなくてはならない ・胃酸が多い場合に精度が下がる |
・バリウム検査と比べて費用が高い ・麻酔薬によるショックのリスクがある ・嘔吐反射が辛い(経鼻内視鏡、静脈内鎮静法により抑えられます) ・静脈内鎮静法を行った場合は当日中の運転が不可 |
胃がんの治療
胃がんの治療では、内視鏡的切除、外科手術、化学療法が行われます。治療が必要になった場合には、速やかに提携する病院へとご紹介いたします。
近年は、低侵襲の内視鏡的切除が可能な症例も増えてきましたが、進行するとやはり開腹手術が必要になります。発見が早期であるほど治療における体へのご負担も少なくなりますので、40歳以上の方は、年に1度の胃カメラ検査をおすすめします。